麻酔記録の酸素濃度の単位が間違っていた問題
先日、電子カルテの麻酔記録で、「なんか、変なデータが入っている」と、院内で大騒ぎになりました。
麻酔記録の酸素濃度が、モニタに表示されている数値と、微妙に違うというのです。
生体情報モニターから出力されているのは、酸素濃度ではなく、「酸素分圧」なのですと。
酸素濃度は%の単位を使いますが、酸素分圧は、mmHg(ミリメートルエイチジーと読むらしいです。人によっては、ミリミリエイチジーとも)という単位を用います。
酸素濃度と酸素分圧は、全くの無関係ではないらしいのです。ある公式によって計算すると、酸素濃度から酸素分圧が、酸素分圧から酸素濃度が計算できるらしいです。
私は専門的な知識がないので、詳しいことはお調べください。
麻酔記録の酸素濃度が、モニタに表示されている数値と、微妙に違うというのです。
酸素濃度と酸素分圧
これは大変、ということで、手術室で使用している生体情報モニタのメーカーさんに来ていただき調べていただいたところ、あっさりと原因がわかりました。生体情報モニターから出力されているのは、酸素濃度ではなく、「酸素分圧」なのですと。
酸素濃度は%の単位を使いますが、酸素分圧は、mmHg(ミリメートルエイチジーと読むらしいです。人によっては、ミリミリエイチジーとも)という単位を用います。
酸素濃度と酸素分圧は、全くの無関係ではないらしいのです。ある公式によって計算すると、酸素濃度から酸素分圧が、酸素分圧から酸素濃度が計算できるらしいです。
私は専門的な知識がないので、詳しいことはお調べください。
なぜ、今まで気づかなかったのか
今回の問題は、1件の手術で発生した現象ではありません。前述のとおり、モニタが出力している値が異なっていたのだから、このシステムを採用して以来、今までずっと、ということになります。
では、なぜ今まで気づかなかったのでしょうか。
麻酔医は術中、電子カルテの画面を見ることはほとんどありません。頼りにしているのは生体情報モニタに表示されているデータです。
そもそも、電子カルテの方は数分おきの記録であり、また、値が反映されるまでに数十秒のタイムラグがあるので、リアルタイムの状況判断には使えないのです。
今回は、緊急の手術であったため、いつもとは別の医師が麻酔を担当しました。普段やらないことを担当するため、いろいろと確認しながらやっていく中で、この問題を発見することができました。
桁が違う
「普段見ないから」ということもありますが、もう一つこの問題をややこしくしていたのが、モニタから送られてくるデータが、そもそも「1桁少ない」ということです。
例えば、40%の酸素濃度だとして、これを酸素分圧にすると、だいたい300mmHgちょっとになるらしいのです。
「40」と表示されるべき項目に「300」と表示されたら、さすがにおかしいと思うでしょう。(しかも単位は%だし)
それが、1桁少なく「30」と表示されていたのです。こうなると、だいぶ不自然さが弱まります。
さらに、前述のとおり、モニタと電子カルテの麻酔記録には若干のタイムラグがあるので、「多少違うこともある」という先入観もあったでしょう。
その後の調査で、モニタ側の送信プログラムに誤りがあったことが見つかりました。
誰が悪いのか
システムの導入から1年半が経過し、このようなミスが発覚、なぜこんなことになってしまったのか、聴きこみ調査よろしく、関係者に聞いて回ったところ、関わった立場それぞれに落ち度があったことがわかりました。
焦点は「現場が求めていたのは、酸素濃度であったのに、なぜ酸素分圧が送られてきているのか」ということです。
まず、現場はカルテメーカーさんに対して、麻酔記録の仕様について希望を出しました。その中に、酸素についての項目があり、その時点では酸素濃度がラインナップされています。
これを受け、カルテメーカーさんは、モニタメーカーさんと打ち合わせ。
しかし、モニタメーカーさんは、最初から「ウチのシステムでは%(酸素濃度)は出力できない。出力は酸素分圧に限る」と、宣言していたそうなのです。
これを受けて、カルテメーカーさんは、麻酔記録の仕様を変更します。そしてできあがった仕様書を現場のスタッフが確認します。
カルテメーカーさんにしてみれば、「キチッと仕様書にして渡しており、OKが出ているので、気づかなかった方が悪い」ということになります。
一方、現場としては「多くの項目がある中、仕様書を渡されるだけでは、単位の変更に気付かない」というのです。たしかに、「削除」ならわかりやすいのですが、単位が変わっていることには気づきにくい。
整理するとこんな感じです。
- 現場:仕様書の確認があまかった。
- カルテメーカー:仕様書は提出したのみで、単位の変更につき注意を促すことを怠った。
- モニタメーカー:桁が間違っていた。
1年半も経ってから、導入時期の担当者に当時の事情を確認していく作業は、あまり気持ちのよいものではありませんでした。
かといって、「そういうことは、しっかり確認しないと…」と批評する気もありません。電子カルテの導入期は、本当に混乱していたし、メーカーさんも職員も疲弊していましたし…。
今回の問題を調査していく中で、麻酔記録の仕組みについてもかなり理解することができたので、まあ、ヨシとしましょう。
いつもこっそり拝見させて頂いております。電子カルテの導入から運用に関して、参考になっております。
返信削除自分も現在電子カルテ導入プロジェクトの真っ最中であり、毎日毎日打合せの連続です。。。
まさに仕様確認といった話もしているので、今回の記事のようなことは気を付けないといけないなと強く感じました。
「メーカーさんも職員も疲弊して…」の所が今後そうなることが容易に想像できるので今からゾッとしてたりもします(笑)
コメントありがとうございます。このブログは、広く病院のシステムに関わる方に情報提供できればと思って書いているのですが、中でも電子カルテ導入に携わっている人には、本当に同じ失敗をしてほしくないので、こういうコメントをいただけると、「書いてて良かった~」とシミジミ思います。
削除導入のまっただ中ということで、どのへんのフェーズかわかりませんが、頑張ってください。
また、具体的に質問などいただくのも大歓迎です。「他の医療機関では、どうなんろ…?」なんて疑問がありましたら(っていうか、私自身、毎日のようにこういう思いふけります)、書き込んでいただければと思います。
返信頂きありがとうございます!
削除以前の記事にあったスイッチングハブのトラブル等も「分かる分かる」と密かに共感していたりします(^0^;)
まさに今は各部署の業務洗い出しや運用会議といったフェーズです。会議ばかりですがここの舵取りを誤ってしまうと、後々面倒なことになりそうなので気を遣っています。
そうですね、この病院のシステム管理といった職種(?)はなかなか横の繋がりを持つ機会が少ないですよね。他施設の運用など興味は尽きないのですが…。
気になったことがありましたら質問させて頂きます。ありがとうございます。