医療機関のWebサイト運営

このブログをご覧の方で医療機関に在職している、していた方がいらっしゃいましたら、情報、ご意見お寄せくださいませ。

本日のテーマは、「医療機関のWebサイト運営、どうしていますか?」

当院では、どうもWebサイトの更新が滞りがちで、ふと気がつくと、「なんか情報古いな~」と思うのです。

利益に直結しない

当院のことをお話しする前に、医療業界共通の事情を考えてみます。

自由市場の業界であれば、自社の製品やサービスを上手にアピールしないと致命的なロスになります。

では、医療業界はどうでしょうか。

まず、そもそも参入障壁が高く、誰でも簡単に開業できるわけではありません。

そして、国の制度設計の中、地域の中核になる大病院、当院のような中規模・小規模病院、そしてクリニックと、疾患やケガのステージによって、医療機関それぞれの持ち場が分かれています。

また、通院・入院されるのは、基本的に医療機関が存在する地域の患者さまです。
たいていは通院手段の問題から、患者さまは「通える範囲」の医療機関にいきます。
急性期では遠くの医療機関に行くことはあっても、回復期、維持期となれば「地元」に転院するものです。

さらに、保健医療は基本的に全国一律の価格です。そこに、割引や、ワケあり価格などというモノは存在しません。
  1. 参入が難しく
  2. 医療のステージごと
  3. 地域ごとに、持ち場が分かれていて、
  4. 価格競争がない
ということで、顧客(患者さま)が流動しにくい業種ということです。
郊外に行けば、医療機関の数が少なくなり、その傾向は強くなります。

つまり、競争原理が働かず、Webサイトの情報を充実させたところで、あるいは、最新の情報をタイムリーに掲載したところで、増収につながるわけではありません。

じつは、医療業界ではおなじみなのですが、厚生労働省が「医療広告ガイドライン」なるものを定めておりまして、そもそもこの業界で商業的な広告活動は御法度なんですね。
医療法における病院等の広告規制について(厚生労働省Webサイト)


それでも情報発信が必要だと思う理由

では、利益、つまり増患につながらないからと言って、Webサイトを放置して良いのでしょうか。

私がWebサイトによる情報発信を充実させていたと思う理由は、病院のイメージアップです。

それには、こんな背景があります。

医療機関の最重要課題は「人材確保」

特に、当院のような地方の中小病院にとっては、これはもう...、深刻な問題です。

私のすぐ近くが、採用担当者の席なのですが、かなりの頻度で看護部長が来て、応募の状況を確認して帰って行きます。

それほど、現場の人材難は深刻だということです。

ところが、「採用強化のためにWebサイトを充実させましょう…」なんて言うと、これがまったく響かない。

「Webサイトで募集が増えるのであれば苦労しない」と、直接言われたことはありませんが…、まあ、そういうことです。

一方で私はこのように考えます。

「Webサイトに惹かれて応募する」ことはないかもしれませんが、「Webサイトにガッカリして応募をやめる」ことはあるのでは、と。

今まさに医療業界で働こうと思っている方が、なにかをきっかけに当院のことを知ったとします。それは、就職斡旋サイトかもしれないし、知人や教員の紹介かもしれません。

そして、当院のWebサイトにアクセスした時、情報が充実していなかったり、古かったりした時に、その方の「気になる医療機関ランキング」の順位が下がってしまうのではないかと思うのです。

地域連携で重要な役割

前述したとおり、国の方針もあって、各医療機関はそれぞれ持ち場が分かれてきています。

診療が一つの施設で完結しないということは、逆に言えば「連携」が必要ということです。

縦横の連携を強化するために、「当院がどんなことができるのか」、「当院を利用するにはどのような手続きがひつようなのか」を発信しておくことは、転院や検査などの紹介を受けるときに役立ちます。

そして、「信用」です。

今や、企業にとってWebサイトは、名刺やパンフレットよりも重要なもの。気になることがあったら、本屋に行きますか、電話で取材しますか、これだけ情報化された社会ですから、やはりWebが最初の接点ということが多いのではないかと思います。

そのWebサイトに、「新設した診療科の情報がない」、「去年退職した医師の名前が載っている」としたら、業界内での信用が下がってしまうのでないでしょうか。

地域連携とは少し違いますが、例えば学会や講演会などで、横のつながりを確認することが多いこの業界。

そんなときに、自分の病院のWebサイトが貧弱だったら、職員が恥ずかしい思いをするのでは…。職員にとって、当院で働いていることを少しでもステータスとして感じてもらえるように、と思うのです。

広報戦略担当者不在

というわけで、私自身はWebサイトを充実させたいと思っているのですが、それができないのはなぜか。

当院では、Webサイトをメンテナンスするのは私の仕事になっています。
ただし、それはエディタやオーサリングソフトを使って、届いたコンテンツをHTMLにする仕事。
「企画・運営」とは違います。

「これはWebに掲載したい」とか「この情報は更新した方が良い」と思っても、私の立場では、提案するだけで、強制力はありません。

病院という保守的な組織の中では、当該部署の知らないところで進めてしまうなんてもっての外。

そして各部署にとってWebサイトの更新なんて、「よけいな仕事」であり、自分から更新を申し出ることはほとんどありません。

これが、Webサイトの更新が滞るカラクリです。

おそらく、しっかりしている医療機関では、広報戦略を担当する職員が「今、どんな情報を出すべきか、出さないべきか」の判断をして、制作を指揮しているのだと思うのです。
その「担当者」は、総務課の職員かもしれないし、院長かもしれないし、それこそ、企画室に担当を命じているかもしれません。

また、院長はじめ経営幹部の広報に対する「認識」も大きいのではないかと思います。

もし、「ウチではこうしているよ」という情報や、「こうしたらいんじゃない?」というご意見がありましたら、ぜひお寄せください。



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