論理的に、決断して、情報をそぎ落とす



以前の記事で「情報は『多ければ良い』ということではない」ということで、少し意見を述べさせていただきました。

情報が多すぎるとかえって何も伝わらないこと、必要最小限の情報に絞り込むことでデザイン的にも洗練されること、そして情報を絞り込むには合理的に考えること必要であることをお伝えしました。

今日は、いくつかそのエピソードを紹介したいと思います。

ナンバリングしない部屋も

配色とナンバリング(2018/5/7)」の記事にも書いたのですが、今回のサイン改修で、診察室以外の、検査室やリハビリテーション室などにも番号を振りました。

患者さんに、「〇番の検査室の前でお待ちください」と案内する想定です。

当初、外来のフロアにある部屋、全てに番号を割り当てたのですが、番号が多過ぎてマップが見づらいということに。

それで、患者さんが直接行くことがない部屋は省こうと。
「直接行くことがない」とは、職員が同行するような部屋です。

例えば、言語療法室。当院では、リハビリテーション室とは別の場所に言語療法室があるのですが、患者さんはまずリハビリテーション室を訪れ、言語聴覚士と一緒に言語療法室に行きます。

なので、言語療法を受ける患者さんが、言語療法室を「探す」ことはないはずです。

だったらナンバリングも要らないだろう、と。

エレベータ横のフロア案内

エレベータ横の限られたスペース情報を詰め込むのも至難の業です。

当院は、フロアごとの機能はザッとこんな感じです。
  • 3階~:入院病棟
  • 2階:リハビリテーション室、検査室の一部、手術室、薬局など
  • 1階:受付・会計、外来診察室、各検査室、各相談室
例えば1階の「各検査室」。

CT室、MRI室、一般撮影室、採血室、採尿室、超音波検査室、心電図室、眼底検査室…これらを限られたスペースに書き出すことは所詮ムリな話。

そこで考えました。そもそもエレベータの前に立つ人はそのフロアから離れようとしている人。

1階のエレベータの前に立つ人は、検査室には用がない人です。

一方、入院病棟からエレベータに乗る患者さんは、何らかの検査をしに1階に行くことが十分考えられます。しかし、その場合は職員が同行するので、〇〇室がどこにあるか患者さんが探すわけではありません。

そう考えると、エレベータ横のフロア案内には、ザックリと「各検査室」とだけ書いておけば、それで誰も困らないのではないかと、そんな考えに至ります。

現場職員の意見も「割り切る」

こうして情報量を整えたデザインを策定し、それが現場で施工されて数ヶ月が過ぎました。「情報が不足している」というクレームはまったく出ていません。

しかし、企画段階では、このバッサバッサと情報をそぎ落としていく作業、かなりもめました。

エレベータ横のフロア案内では「検査室ではなく臨床検査室が正式な名前だ!」、「CT室が書いていなかったら患者さんが迷う」など、検討メンバーから酷評され、何度も心が折れそうになりました。

「こうして周囲を納得させた」と、カッコよく書ければ良いのですが、実際には最後まで折り合いがつくことはなく、時間切れで私が押し切ってしまいました。

会議室では、もちろん自由な意見を言ってもらって構いません。現場の職員に聞いてみないと、わからない、知らないこともあるので、それは貴重な情報です。ただし、その意見が、深い思慮の上に出ているかというと、そうでないことも多いのです。

医療現場の職員は患者さんを診るのが仕事で、そこはリスペクトしていますが、この手の仕事…、何層にもなる事柄を、様々な条件を想定しながら最適化する仕事は、現場仕事を抱えながらこなすのは難しいと思います。

だからこそ、私のような企画部門の職員を置いていることはわかっています。実績があれば一目置かれ、話も聞いてくれるのでしょうが、私がそこに到達するのはもう少し先のことのようです。



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