ITによる院内の情報共有について考える

組織が大きくなると、統制がとれなくなるものです。

先日、「フットケアチェックの周期を判定する(2018/7/5)」という記事を書きました。
内容は記事を参照いただくとして、この案件で特殊だったのはその「スピード感」。

簡単にまとめると、「いつもこの手の案件はこちらが提案してもなかなか動かないのに、今回は現場が主導で、調子が狂う…」という話でした。

なんとか、現場の要望に応えることができたわけですが、その後思わぬトラブルが…。

聞いてない

前述の案件が、さっそく現場で実用化されたのですが、すると、「それは〇〇会議を通して承認されたのか」とはじまり、そのうち「そもそも誰が言い出した案件なのか」と、看護部内で大問題になったとのこと。

この案件を担当していた現場の職員が、どんな調整をしていたのか知りません。

が、私も開発を担当したものとして、もう少し背景を確認しておけば良かったと思いました。

情報伝達にかけるコスト

このトラブル、話を聞いていると、どうも単純な「言った言わない」の話ではなく、この案件をオフィシャルにするにはどこで出したら良いのか、が整っていなかったことが原因のようです。

まあ、やれやれ…という感じですが、冒頭にも書いたとおり、組織が大きくなると統制がとれなくなる、つまり情報共有が難しくなってきます。

しかし、現代はこの問題を解消する様々なITツールがあります。

ところが当院ではこういったツールを使いません。

私が考える理由は2つです。

一つは、情報共有にかけるコストに対する考え方です。
他の医療機関の方と話をすると、一定以上の職員をかかていると、たいてい何らかのグループウェアを使っています。

グループウェアはいろいろなものがあり、オンプレならイニシャル、クラウドならランニングで相応の費用が発生します。

しかし、医療機関にとって「お金をかける優先順位」は、まず「医療機器」です。
「情報共有」はお金を稼いでくれません。

個人のこだわりをどこまで許容するか

「メールとかグループウェアとか、そんなもの見ないから、口頭で連絡してくれ」

というコダワリ…といかワガママ。

他の業種だったら考えられないことですが、医療ではこれがまかり通るのです。
特に先生…、「医師」です。

当院のような地方の中小病院では、たださえ「医師」を招聘するのはたいへんなことです。先生が「イヤ」だと言えば、話はそこまでです。


こんなわけですから、冒頭に書いたような情報共有のミスが一向に減りません。


情報共有にお金をかけたくない、ITは使いたくない
数百人規模の組織なのに、「口頭」による情報伝達

壮大な伝言ゲームでミス連発


こんなもどかしさを感じるたび、昔のことを思い出します。

苦い記憶

20代の頃(つまり20年以上前ですな)、別の病院で働いていたのですが、私が所属していた部署のトップに、医療とは別の業界の出身者が就きました。

その方はシステムコンサルティングの会社からヘッドハンティングした人物です。

よくこぼされていたのが、「なぜ情報を紙に書かないのか」ということ。

口頭伝達だけでは、言った側と受け取った側で、理解にズレが生じるので、必ず文書にしなさい、と言われました。

当時の職場では、体系化されたルールもなく、「暗黙知」で仕事が回っていました。
「文書化なんて面倒なことやるより、その場で言った方が早い」と、反発する者も出ました。かくいう私も反発した者の一人でした。

しかし、その方が言っていることの方が正しいと気づくのにさほど時間はかかりませんでした。

立場が変わり、他部署や院外の人と仕事をするようになり、そして自分が部下を抱えるようになると、情報をいかに正確に伝えるかに苦労するようになりました。



当時は、「ワープロ」なんてもので小さいディスプレイに向かって必死に文書を書きました。

今は、便利なツールがたくさんあるのに…、と思うともどかしいばかりです。

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