Microsoftの「497日問題」が原因で、内視鏡検査が停止

【久々のビックトラブル】

「災害は、忘れたころにやってくる」と言いますが、先日、久しぶりにシステムトラブルがありました。

問題が発生したのは、内視鏡の画像管理(以下、内視鏡システム)システムです。

内視鏡システムは、内視鏡検査を全般にサポートするシステムです。
オーダー情報を電子カルテから引き継ぎ、撮影した静止画像を蓄積、あらかじめ用意されたテンプレートに画像を貼り付けコメントを記入しレポートを完成させます。蓄積した画像やレポートは、各カルテ用のクライアントPCからWeb参照できるようになっています。

午後の検査が開始する直前、内視鏡室から連絡が入り、「スコープがネットにつながっていないようだ」と。
見に行ってみると、(スコープではなく)画像の送信装置がサーバーを探し続けている様子。

メーカーさんにリモートでログを確認していただくも、これといって問題はないとのこと。

そのうちメーカーさんのサービスの方も駆けつけ、サーバー室と内視鏡室を行ったり来たり。

電子カルテで受付処理したオーダーがシステムに反映されているので、カルテシステムと内視鏡システムの接続は問題ない。
ということは、送信装置だけが通信できない…?、いや、送信装置のIPアドレスにpingは通っている。

「IPアドレスがかぶっているのでは?」なんてことも頭をよぎりましたが、最近、PCやネットワーク機器を増設した記憶もなく…。

LANケーブルを新品の者に交換してみたりと、いろいろしてみましたが状況変わらず…・

最終的に、「もう、サーバーしかないでしょ!」ということで、サーバーを再起動し、全ての機能が復旧しました。
その後の調査で、メーカーさんから「2008Serverの497日問題でした」との報告。

この「497日問題」とは、一部のMicrosoft製品で確認されている問題で、起動後、497日を経過すると、TCP/IPの通信が不安定になるというもの。再起動すれば復旧します。
(詳しくはMicrosoftサイトをご参照ください)

【Microsoftがリリースするパッチの適用責任】

今回の問題は、Microsoftが「WindowsUpdate」でリリースするパッチを適用していなかったことが原因です。
では、Microsoftのパッチを適用する責任は誰にあるのでしょうか。

医療機関に限らず、パッケージ化されたシステムで、意図的にWindowsUpdateを適用しないことは少なくありません。

一つは理由は、「触らぬ神にたたり無し」というか…。現在問題もなく稼働しているシステムに、余計なパッチを当てたくないと思うのは、システムに携わる人間なら気持ちは理解できるところです。

もう一つ考えられるのは、環境的に困難であることです。
ほとんどの医療機関では、HIS系でインターネットを接続することは、むしろ「御法度」とされています。ウィルス感染やハッキングなどのセキュリティリスクを考えると、インターネットに接続しないことは、最も手堅い運用です。
当院も、多くの先生が「カルテPCでWeb見られるようにしてくれ」と言いますが、丁重にお断りしています。
(最近は、仮想化技術によってコレを実現する先進的な病院さんもいらっしゃるようですが)
で、インターネットに接続していない環境では、WindowsUpdateは極端に使いづらいものになります。

と、それなりに事情もわかるのですが、他方、Windowsがリリース時に「完璧ではない」からこそWindowsUpdateという仕組みがある、と考えれば、これを無視して良いわけがありません。

毎月大量にリリースされるMicrosoftのパッチを、一つ一つ検証し、システムの安定稼働に必要なものか不要なものか、適用した場合問題が発生しないか検証するのは、たいへんな作業量になるでしょう。

まだメーカーさんと「パッチの適用責任」について話はできていないのですが、どのような見解をいただけるのか、興味深いところです。

【一番の被害者は患者さま】

検査ができなかったことでの減収、患者さまに検査中止の説明をするスタッフの精神的苦痛など、当院も今回のトラブルでそれなりのダメージを負いました。

しかし、一番の被害者は他でもない、患者さまです。

内視鏡検査といえば、食事制限や下剤の投与で検査に備えます。身体的にも精神的にも負担を負って検査に備えていたわけで、単純に予約を取りなせば良いという問題ではありません。
それを思うと、本当に申し訳ない気持ちになります。


今回の件で、院内の全てのシステムで、WindowsUpdateの適用がどのような仕組みになっているか、徹底的に調査するつもりです。



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