DWHとBIツール

「電子カルテに蓄積したデータをいかに活用するか」
ここのところ、私にとって最もホットなテーマです。

データ活用の有効性に目覚め、ExcelやAccessを使って様々な資料やアプリケーションを作ってきたのですが、これに限界を感じ、なんらかの「プラットフォーム」が必要だと思っています。

とはいえ、どんなプラットフォームにしても、一介の事務員がぶち上げるには、「職命を賭す」といってもいいような費用が発生します。
決して失敗はできない状況で、導入する製品の選定には慎重にならざるをえません。

今日は、製品の市場調査を、データウェアハウス(以下、DWH)にとどまらず、BIツールにまで範囲を広げてます、という話です。


DWHで分析した結果を共有したい


DWHのベンダーさんに話を聞いているときに、いつも思っていたのが、「分析結果をどうやって公開するのか」ということ。

「なぜ公開する必要があるのか?」と思われる方もいるでしょう。
ここで、前回の記事、「データ活用のヒアリングで思ったこと...大きく分けると①定型、②分析、③現状認識」で書いた、3つのデータの活用方法について、DWHとの相性を考えてみます。

前回記事では、データの活用方法を以下の3つに分類しました。

  1. 定型資料の作成
  2. 分析業務
  3. 現状認識
これらをDWHで実現するとしたら…。

「1.定型資料の作成」とは、いわゆる月報など、定期的に一定の方法で集計した資料を提出する業務です。特に難しいことではありません。

「2.分析業務」こそ、DWHの本領が発揮できる仕事でしょう。お話を聞いたDWH製品は、そのほとんどが、夜間など負荷の低い時間帯に各システムからデータを複製します。ここで重要なのが、データを「再構築」することです。各システムのデータは私たち素人がパッと見ても解釈するのにとても時間がかかります。DWHに「わかりやすい」形に再構築することで、分析作業をするユーザーの負担が軽減できます。そして、この再構築とデータベースエンジンの性能により、処理スピードの高速化されるのだと思います。
こうして、ユーザーた使いやすい形に加工されたデータ群は、選択するフィールドや、集計のパラメータを、次々と変化させるときに力を発揮します。規則性を見いだしたり、仮説を検証するのは、DWHの真骨頂と言えます。

問題は、「3.現状認識」です。

例えば、「予約枠の空き状況を表示する」というアイディア。
電子カルテの予約入力画面で、もちろん予約枠の状況を確認できますが、例えばポータルサイトに視覚的に情報を表示しておき、医師やクラークが、ちょっとしたきっかけで「そういえば、〇〇科の午後、空きがあったな…」とか、「MRIの枠が空いていたから、今日撮影できるな…」とか思い出せるようにしたい。


DWHは用途は「データの分析」(あたりまえですが…)

前述の「予約枠の空き助教を表示する」をDWHでやろうとすると、2つ問題が出てきます。

一つは、情報を共有する方法です。
この例では、多くの職員が情報を共有することを前提としていますが、DWH製品自体は情報の共有機能を持ち合わせていないものが多いようです。
なにより、購入するライセンスが高い。このことからも、限られた担当者が分析に使うことを想定しているのでしょう。

もう一つは、リアルタイムに処理できないことです。
多くのDWH製品では、本番からデータをコピーして再構築します。で、それを夜間にバッチで処理する運用が多いみたいです。
となると、刻々と変化していく予約枠の状況を反映することができません。


データの共有に強いBIツール

と、こんな疑問をいただきながら多くのDWHベンダーさんと話していたのですが、その時ある方から進められたのが「BIツール」です。

BIツール製品の多くは、分析結果を経営者や中間管理層が共有することを目的としています。
なので、分析結果を見やすく表示することにこだわりを持っています。いわゆる「見える化」ってやつですね。
多くの製品が、Webサーバを立てて、生成したHTMLを閲覧する仕組みになっていました。多くの職員が閲覧するには、Webベースの構成されている点は有利ですね。

もう一つ、リアルタイムにデータを反映することができるか、については、一部の製品ではそれが可能なものもあるようです。
あまり複雑な処理はしないとしても、多くのユーザーがデータベースにアクセスすれば、相応の負荷がかかりますので、仮に「可能」であるとしても、よく考えた方が良さそうですね。

DWHとBIツール、どちらを選択するべきか

この両者、境目がハッキリとしているわけでなく、DWHにはデータを共有できるオプションが用意されてたり、BIツールでもデータ分析に強い製品もあります。

ただ、一つ言えるのは、守備範囲の広い製品はそれなりに金額も高くなるということ。

ちなみに、ベンダーさんによると、DWHで分析してBIツールで公開するという、なんとも贅沢な医療機関もいるとのこと。
考えようによっては、それだけ経営環境がシビアということなのでしょうか…。

さて、当院では仮に「DWHかBIツールか」という議論になったら、どうなるでしょうか。

おそらく「BIツール」です。

もともと、データ活用の話は、ある現場から、「データを共有したい」という要望があがったことから始まりました。

その後、私が、データ活用には何らかの「加工」が必要であり、1から手組みするのはたいへんなので、相応のプラットフォームを導入すべき、という提案をしました。

私的には、データ加工の負担を軽くするツールとしてDWHを採用したいのですが、それを公開する方法がないのでは最終目的である「データ共有」にたどり着きにくいのです。



市場調査はこれからも続けるので、また気づいたことがあったら、記事にしたいと思います。



コメント

  1. すでにご存じだと思いますが・・・

    昔、お世話になった沖縄の病院で「Caché Ensemble」という
    分析ツールを導入していました

    各診療科の混雑状況や機器の使用状況がリアルタイムで表示され
    利用者は時間を気にせずに検索分析ができるんですよ~

    と、センター長がおっしゃていまいたが・・・お高そうです

    返信削除
    返信
    1. 情報提供ありがとうございます。

      Cacheの件ですが、今回の市場調査の中で、ベンダーさんと話をしたことがあります。
      お察しの通り、お話ししたDWHベンダーさんの中では、高額なグループですね。
      導入実績の資料をいただいたのですが、もう、ビッグネームの医療機関ばかりで、「場違い?」と思いながらお話をしていました。

      じつは、記事本文にあるように、本番からデータをコピーする必要がある、つまりリアルタイムのデータ参照はNGだと思っていました。
      開発のしかたでは、リアルタイムにデータを参照できるのかもしれませんね。

      少し、見方が変わってきました。
      貴重な情報ありがとうございます。

      削除

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