「即入院率が上がっているので病棟が忙しい」検証してみました

先日出席した会議で、「即入院の件数」が話題になりました。

計画入院と即入院

あたりまえですが、患者さんが入院するときは、外来を通過することになります。

外来は大きく分けると、一般の外来と、救急外来に分かれます。

そして一般的な外来で入院になる場合はたいてい「計画入院」になり、救急受診から入院する場合は「即入院」になります。

その言葉の通りですが、「計画入院」は、入院治療をするにあたって、患者さんと病院側の都合をすりあわせ、日程を決めて入院します。
一方で、「即入院」は、今すぐ手術が必要な場合や、ご自宅で管理するには困難な場合など、その場で入院になるケースです。

「計画入院」は病院側もいろいろと準備ができるので良いのですが、即入院は突発的なことなので、いろいろと大変なのです。

即入院は現場でコントロールできる?

おそらくどこの病院でも同じだと思いますが、高いベッド稼働率を望む経営側と、余裕を持ってベッドコントロールをしたい現場の間で摩擦が起きます。

経営にしてみればもっと受け入れられるはず、現場は、満床なので受け入れられません、と。

こと救急では、時間的にも現場の判断が優先されます。

すると、経営サイドに「救急患者を現場が断っているのでは」と疑念がわくのです。

即入院率って出せるの?

さて、会議の話です。

会議では、看護部から「病棟が忙しくて、看護師を始めスタッフが疲弊している」との訴え。

で、忙しさの理由として、「最近、即入院の件数が増えてきている」とのこと。

ベッドの稼働率や入院数が同じでも、入院に占める「即入院」の割合、つまり「即入院率」が高いから、その分忙しくなっているとのこと。

ふんふん、と聞いていた私に、出席していた一人の医師から投げかけられた質問が、

「そういう数字(即入院率)って出せるの?」

「いけると思います」と私。

SQLで集計

あまり期待もしていませんでしたが、電子カルテの入院情報に、「その入院が計画入院か、即入院か」などという便利なフラグはありませんでした。

というわけで、最近すっかりなれてきたSQLを使っての、電子カルテのデータベース集計です。

1件の入院に対し、最初に入院を入力した日時と、最終的に入院が確定した日時の差で、それが計画的になされたものか、あるいは突発的だったのかを識別します。

データベースの構造を理解するまでに少々時間がかかりましたが、わかってしまえばこっちのもの。

入院当日に最初の入力があったら、それは「即入院」とみなします。

問題は、日またぎの入院。
最初の入力が、入院日の前日だったら、それは計画入院。しかし、深夜、例えば23:00に救急外来で来院した患者さんが、数時間して入院した場合は、日付が変わってしまいます。
そこで、前日18:00以降の入力だったら、それは「即入院」にしようと決めました。

集計結果は・・・

そうして集計した結果は・・・、なんと「即入院率に変化なし」

直近1年以上、入院件数全体の中で即入院の割合は、55~60%で推移しています。

たしかに、一時期、若干、ほんの若干、即入院率が上がっていたのですが、それも先ほどのレンジに収まる中でのこと。しかも直近ではまた普通の数字に戻っていて・・・。

「即入院の増加」を理由に、現場の忙しさを訴えていた看護部にとっては、あまりよろしくない結果になってしまいました。

まあ、「数字は嘘をつかない」とは使い古された言葉ですが、出てしまった集計結果を、私の判断だけでお蔵入りにするわけにはいきません。

というわけで、先日、集計結果をグラフ化し看護部に提供したところです。

はたして次回の会議にこの資料を使われるのでしょうか・・・。


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