所見の確認漏れ、どうしてますか
近年話題になることが多い、検査所見の見落とし。
慈恵医大病院のケースは記憶に新しいところです。
医療関係者ではない方のために、なぜこのようなことが起こるのか、少し書いておきます。
一般の方にはあまり馴染みがないかもしれませんが、医療の現場には「読影医」という人たちがいます。
その字面から想像つくと思いますが、検査画像を詳しく見ることを専門とする医師です。
今に始まったことではありませんが、医療の現場では専門分野に特化した人材が、それぞれの得意分野を担う、「分業」が進んでいます。
診察室で患者さんとお話しする医師が、必要に応じて検査をオーダーします。放射線科などの検査部門が撮影した画像を読影医がじっくり診て、異常がないか確認します。そして読影医が書いた報告書(レポート)を元に、検査をオーダーした医師は診療を進めていくわけです。
このとき、様々な理由でレポートが診察に活かされないことがある、というわけです。
例えば、診察医が非常勤医師の場合、レポートが返ってきたときには、すでに病院にいない、ということがあります。慈恵医大病院の件はこのケースです。
外来患者さんの場合、「来週結果をお伝えします」といって次の診察の予約を取ったものの、何らの事情で診察に来られなかった、そしてそのままになってしまう、などということも考えられます。
先日、当院でもこの話題になり、放射線科を中心に、どうやって見落としを防ぐかの対策が話し合われました。
私はこの打ち合わせに参加していなかったので、「~ということになりました」と後で聞いたのですが、その方法が「緊急の対応を求めるレポートは、放射線科がプリントアウトして配る」というもの。
配る先は、リーダーナースを通じて担当医師、院長、副院長(2名)の4枚と、これに放射線科保管の1枚。
なにやら、「やっぱり、紙があると目に留まるので忘れない」のだと。
いろいろ挙げられていますが、軸になるのはやはり「複数の目でチェックする」ということらしいですね。
興味深いのは「3.電子システム上の工夫」なのですが、はたしてどこまで可能なのでしょうか。
この問題は医療業界全体で認識されているはずなので、PACSベンダー、レポートシステムベンダーさんも何らかの対策をとっていることかと思います。
慈恵医大病院のケースは記憶に新しいところです。
この慈恵医大病院の件は相当のインパクトで、2017年の保健所の立入り検査(毎年定期的に入るものです、ヤバいやつではありません)の時に、 保健所職員が雑談の中で、この件に触れていました。慈恵医大、がん疑い見逃し新たに5人、検討委(m3.com 2017/7/21)
なぜ見落としが起きるのか
医療関係者ではない方のために、なぜこのようなことが起こるのか、少し書いておきます。
一般の方にはあまり馴染みがないかもしれませんが、医療の現場には「読影医」という人たちがいます。
その字面から想像つくと思いますが、検査画像を詳しく見ることを専門とする医師です。
今に始まったことではありませんが、医療の現場では専門分野に特化した人材が、それぞれの得意分野を担う、「分業」が進んでいます。
診察室で患者さんとお話しする医師が、必要に応じて検査をオーダーします。放射線科などの検査部門が撮影した画像を読影医がじっくり診て、異常がないか確認します。そして読影医が書いた報告書(レポート)を元に、検査をオーダーした医師は診療を進めていくわけです。
このとき、様々な理由でレポートが診察に活かされないことがある、というわけです。
例えば、診察医が非常勤医師の場合、レポートが返ってきたときには、すでに病院にいない、ということがあります。慈恵医大病院の件はこのケースです。
外来患者さんの場合、「来週結果をお伝えします」といって次の診察の予約を取ったものの、何らの事情で診察に来られなかった、そしてそのままになってしまう、などということも考えられます。
そして「紙」に回帰する
先日、当院でもこの話題になり、放射線科を中心に、どうやって見落としを防ぐかの対策が話し合われました。
私はこの打ち合わせに参加していなかったので、「~ということになりました」と後で聞いたのですが、その方法が「緊急の対応を求めるレポートは、放射線科がプリントアウトして配る」というもの。
配る先は、リーダーナースを通じて担当医師、院長、副院長(2名)の4枚と、これに放射線科保管の1枚。
なにやら、「やっぱり、紙があると目に留まるので忘れない」のだと。
消し込みはどうするのか
人力で紙を配ることのコストをとやかく言うつもりはありません。皆わかってこの決断をしたことでしょう。
ただ、私がわからないのは、その「レポートで指摘された問題」に対し、「フォローされた(されない)情報をどうやって共有するのか」ということです。
レポートが配られた院長や副院長は、もう対応したのか、まだ対応していないのか、患者さんのカルテを開けて毎日チェックするのでしょうか。
どれくらいの頻度で緊急度の高いレポートが発生するのかわかりませんが、あまり現実的ではない気がしています。
大病院やメーカーの対応はどうなっているのか?
当院は一応、「急性期病院」の機能も持ち合わせていますが、大学病院をはじめとする大規模病院と比べれば、緊急のレポートの発生頻度は比べるまでもありません。
逆に、大病院ではこのような見落としを防ぐためにどのような対策をしているのでしょうか。
前述の慈恵医大病院の件では、このような提言をまとめています。
「診療情報共有不全を解消するための提言」
- 画像診断報告書の重要情報を共有するための人的支援制度(情報共有のための「司令塔」制度)の導入
- 患者への検査報告書の交付
- 電子システム上の工夫
- 画像診断部からの重要所見情報の発信強化
- 「医師交代サマリー」のさらなる実施徹底とハンドオフシート制度の導入
- 継続的な研修、教育
興味深いのは「3.電子システム上の工夫」なのですが、はたしてどこまで可能なのでしょうか。
この問題は医療業界全体で認識されているはずなので、PACSベンダー、レポートシステムベンダーさんも何らかの対策をとっていることかと思います。
院内ポータルに反映できないか
ここからは、個人的な意見です。
この問題は、やはり「発生」と「その後」を複数人で共有する仕組みが必要だと思います。そして、情報の共有は本来、「IT」が最も得意とするところです。
当院が「紙」を選択するのは、そいうったプラットフォームが整備されていないというのもありますが。結局、紙がデスクの上に置かれていたら、「イヤでも目に入る」からなのだと思います。
見ざるを得ない…、見ることを「仕組み化」するのには一理あります。
しかし、それでは情報のアップデートができない。それとも、アップデートを共有するための「紙」が別に存在するのだろうか?いずれにしても現実的ではない。
そこで、院内ポータルに緊急レポートの発生状況・処理状況を共有するための仕組みが導入できないか、また、サイネージにして院長室などに設置するというのはどうだろうか。
そして、PACSベンダーやレポートシステムベンターには、院内ポータルのシステムにデータを反映できるよう、データベースへの接続を許可していただきたいと思うのです。
当院では、2019年にはPACSおよびレポートシステムの更新を控えているので、ぜひとも検討要素の一つに「データベースへの接続」を入れたいと思っています。
さて、少し時間が経ったら「レポートを配る」がその後どうなったのか、レポートしたいと思います。
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