次期PACS導入の付帯費用いろいろ

4/10に「次期PACSベンダーさん選考中です」という記事を書きました。

選考にあたり、重要な要素の一つが「金額」です。
PACSそのものの購入金額や保守費用は当然ですが、その他にいろいろと考えなければいけない費用があります。

「PACS」だけの金額を計上するのではなく、PACSを更新すると「影響が出る」部分を全てカバーして、「この金額がかかりますがよろしいでしょうか?」というように上申する必要があります。

この作業を怠り、決裁を通した後に追加の費用が発生すると、かなり気まずくなります。

大型案件では、ベンダーさんが決定した後は、事情が変わったからといって簡単に引き返せません。ベンダーさんが決まる前なら、高額な費用を提示されたら、「じゃあ他のベンダーさんに…」とこちらが主導権を握れますが、ベンダーさんが決まった後は受け入れざるをえません。これも「ベンダーロックイン」と言ってもいいでしょう。

だからこそ、PACSの更新にまつわるあらゆる費用を抑えておかなければなりません。

それでは、具体的にどんな費用があるでしょうか。

仕様変更

どこの医療機関でも、独自の業務フローがあるものです。
その内容にもよりますが、多くの場合、「カスタマイズ」はお金がかかるものです。

「既存のシステムでできたことが、新システムではできません」が許されることはほとんどありません。

この費用の積算が最も困難です。契約後なら、あるいは契約に限りなく近ければ、突っ込んだ話ができますが、医療機関、ベンダーさん、お互いにまだどうなるかわからない状況で、実用上の問題を洗い出すのは、かなり根気のいる作業です。

モダリティの接続費用

PACSのベンダーさんが変わると、モダリティをの接続し直す必要があります。
ここでいうモダリティとは、レントゲン装置やCT装置・MRI装置等です。内視鏡やエコーなども接続している場合はこれらの費用も見込まなければいけません。

この費用は、PACSベンダーさんと、モダリティベンダーさん、双方に費用が発生します。

電子カルテの接続費用

電子カルテやオーダリングシステムで検査のオーダーをしている場合や、電子カルテからPACSのビューワーを直接起動するような場合は、電子カルテベンダーさんに対応してもらう必要があるので、やはり相応の費用を計上します。


このあたりまではよくある話なのですが、今回はこの他にもいくつか面倒な費用が発生します。

クライアントPCの更新

当院で使用しているHIS用のクライアントPCは、「Windows7 32bit」です。

PACSベンダーさんによると、最新のビューワーソフトはWindows10の64bit版を基準にして開発されているため、Win7 32bitの当院の場合はいくつか前のバージョンのソフトを使用しなければならないのです。

閲覧するだけのPCなら良いのですが、放射線科や読影をする部署で、より高度な機能を求めるのは必然であり、最新のビューワーソフトが動く環境、つまりWindows10 64bitが動くPCは必須です。

すると、Windowsの更新費用を積算しておかなければなりません。
また、くたびれたPCのWindowsだけを更新するのが「割高」と感じるようであれば、PC本体を更新するという考えも出てくるでしょう。
こういったことを一つひとつ積み上げていかなければなりません。

「今時、Win7って…」という声が聞こえてきそうですが、HISは「インターネットと接続しない」という病院が圧倒的に多く、その意味でセキュリティリスクが低いと考え、更新を後回しにしている病院も多いのではないでしょうか。

サーバーの設置

さて、サーバーの話の前に、サーバーの「仮想/物理」ですが、結局「物理構成」になりそうです。
長らく「仮想サーバー」を導入するつもりで検討してきたのですが、なぜ物理構成になったのか、それはまた次の記事に書きたいと思います。

で、サーバー設置に関する費用の話です。

まず、物理的に「置けるのか」という問題があります。現在のサーバー室はスペース的には潤沢と言えません。その中で、新旧2セットのサーバー群を稼働させる必要があります。

多くのシステムは、新旧切り替える際に、データを移行します。すると、データを送る側の旧システム、受け取る側の新システムが同時に稼働する必要があります。
同時稼働が必要な期間はシステムによっても違いますが、PACSの場合は誇大な画像データを扱うので、データ移行は数ヶ月にわたります。

どうしてもスペースが捻出できなければ、サーバー室を拡張するか、別に設けるかなどしなければならず、こういったことも検討しなくてはなりません。

スペースの問題がクリアできたとしても、電源の容量や空調、LANのポートがなければスイッチ類などを拡張するための費用も考えなければなりません。



と、調べなければいけないことは山ほどあります。最近はこの仕事にかかりっきりです。

コメント

  1. いつも楽しく拝見しております。
    HISベンダーのPACSも検討しておいででしょうか?

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    返信
    1. ご質問ありがとうございます。
      HISベンダーさんのPACSは検討の対象外でした。
      当院が採用しているHISベンダーさんは、PACSも開発されているのですが、リリースして間もないため、「実績不十分」ということで、早々に検討対象から外しました。
      (見積を依頼すればおそらく)安いのと、HISサーバーと管理体系が共通になるので、私からするとぜひ検討していただければ、と思うのですが、臨床の側はまったく「興味なし」でした。

      削除
    2. 返信ありがとうございます。
      HISとの親和性を考えますと、なるべく部門システム(サブシステム)を持ちたくないとシステム管理者は考えますよね。
      当院も以前は、内視鏡のみ別PACSでしたが、今は放射線PACSに統合しました。先生方も透視画像との比較などがしやすいなどおおむね好評で、検査時間も縮小され件数を伸ばすことができました。
      HISメーカーが作るPACSは既存メーカーにとっては脅威になるでしょうね。

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