たまには「モチベーションの保守」も

去る、5月19日、東京の虎ノ門ヒルズフォーラムで行われた、「Microsoft CityNext ソリューション フォーラム 2015」に参加してきました。


Microsoft(以下MS)さんの、「CityNext」とは、公共・医療・教育機関を対象にしたプロジェクト、ということくらいの認識でそれ自体は今回初めて知りました。私としてはピンポイントで、福井県済生会病院さんと、亀田メディカルセンターさんのケース発表に興味があって参加を決めました。

会場は、私のような医療機関の職員ではない、ベンダーさんの方が多くいらっしゃったような気がします。なにをもって医療期間職員ではないかというと、その風貌。高そうなスーツを着ていたり、髪型が凝っていたりすると、「あ、こっち側の人じゃないな…」と。あくまで個人的な見解ということで…。

このイベント、私にとって「仕事に対するモチベーションをリセットする」という意味で、とてもいいイベントでした。

福井県済生会病院さん、亀田メディカルセンターさん、両病院とも、日本で屈指のIT先進病院だと思います。

福井県済生会病院の竹内さんは、同院で実施しているさまざまな取り組みを紹介されていました。

  • HISと情報系の統合、無線LANの整備、BYODの取り組み
  • ポータルサイトやデジタルサイネージを活用して情報共有を活性化
  • ベッドコントロールの簡素化、効率化
  • レポート見落としの注意喚起
  • 診療のガイドラインをデータ化して進捗管理に活かす
中でも、レポートの見落とし対策と、診療ガイドラインのデータ化は、ITが「直接」診療を支援する、素晴らしい取り組みだと思います。

一方の亀田メディカルセンターの中後さんは、国の医療政策など広い視点での考察、そして亀田病院グループのビジョンとチャレンジをご紹介いただきました。

さて、両病院の取り組みを聞いて、確かに素晴らしいと思います。ただ、冷静に考えてみると、その素晴らしは、「新しさ」にあるわけではないことに気づきます。あえて言えば、一つ一つのケースは、病院のシステム管理者なら多かれ少なかれ発想することだと思います。
では何が素晴らしいのか、それは、「実行力」だと思うのです。

例えば、情報インフラの強化と利便性の向上について。
当院の情報インフラとして、ネットワークの構造や、どんなプラットフォームを使って情報共有したら良いかなど、ボンヤリとですが私なりの「理想の形」はあります。
しかし、実際は、「ウチはIT投資には理解がないから」とか、「新しいことをしようとすると、必ず反発があるから」とか、「日常業務追われていて…」とか、なんだかんだ言い訳しながら「先送り」しています。
「費用対効果を計算してプレゼンしてみるか…」なんて、(奇跡的に)重い腰を上げたとしても、行き詰まると「院長や事務長がもっとITに精通していれば、こんなことしなくてもいいのに…」なんて、さらなる言い訳ををひねり出して、そのままに放ったらかしにしてしまったり。

例えば、ITを駆使した診療支援。
アイディアはたくさんあります。データによるスクリーニングや、ワークフロー(工程)管理、診療実績の統計処理など、思いつくところはたくさんあるのですが、これらには医師の協力が必要です。ただでさえ忙しい先生方に協力を要請するというのは、医療という業種のヒエラルキーの中では、なかなか難しいことです。

結局のところ、理想やアイディアはあるものの、それらを実現に結びつけるための準備を尽くせていないということです。

両病院のIT化が、経営層からのトップダウンで推進しているのか、それともシステム部門が積極的に取り組んでいるのか。その点はお話に出てこなかったのですが、登壇された竹内さん、中後さんの話しぶりから推察するに、お二方とも熱い思いがおありのようです。

病院のシステム管理者にとって、技術的な研鑽を積むことももちろん重要ですが、「自らの意識を刺激する」こともとっても重要だと改めて思いました。
今回のようなイベントへの参加でも良いし、他の病院さんへの見学でも良いし、あるいは、ベンダーさんからの情報提供でも、形は何だって良いと思います。病院のシステム管理者として「モチベーションの保守管理」も大事な仕事だと思いました。

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